中級「に向けて」の練習

大学の紀要論文で以前書いたのは「ピアノ上級技巧の学習方法」である。これは、上級技巧といってもさまざまであり、練習曲の選択次第ではテクニックに偏りが生じる可能性があることの指摘と、具体的な練習曲の利用法、「演奏達成プログラム」を用いた指導について書いたものである。

今年度は視点を少し変えて、「ピアノ中級技巧に向けての学習方法」を書いた。「向けて」というのは、たとえば有名なフェルディナント・バイエルがその教則本の序文で「私はこの後に中級程度の難易度まで進む詳しいピアノ教則本を出版することを考えている」というように、初級から中級に進む過程には難しさがあると考えたことが理由である(注)。K.ヴォルタースのグレードだと「Stufe 5」ということになるが、このグレードをどのように学習するかが重要と考えた。

詳しいことは紀要論文をお読みいただきたい。

さて、ここ数年悩まされている手の痛みであるが、最近はかなり改善されてきた。近くに名医がいることを発見したことが大きい。以前は「テニス肘ですね」「これは治らないんですよねぇ」とニコニコ話されて湿布薬を出して終わり、などという医者が多かったのだが、新しい先生は様々な治療法を試した上で最適な方法を教えてくれた。右肘はテニス肘だとかで、確かになかなか治らないらしいが、最近は、以前はできなかった雑巾を絞る動作も問題がなくなったのが喜びである。そして左手の腱鞘炎は、おそらくパソコンのキーボードの打ち過ぎ、およびピアノのテクニック(特にオクターヴ以上の音程をトレモロで演奏すること)によると思われる。よくこういう時に「安みなさい」という人がいるが、単に休んだだけでは私の仕事にも差支えるし、決していいことはないと思う。それより、運動は適度に続けながら治していくことである。そのおかげで、昔からの左手トレモロの練習不足も原因のひとつであることが分かってきた。

さまざまなテクニックを合理的に練習することについては、今後も研究を続けていきたいと思っている。特に中級「に向けて」の段階での技巧習得について、今後もさらに調べてみたい。

注: 安田寛『バイエルの謎  日本文化になったピアノ教則本』新潮社(新潮文庫)、平成28年、pp.24-25