モーツァルト「ピアノ・ソナタ」を弾く

子どものころ学習していたが、なかなか難しく、先生に言われたように弾けなくて困ることが多かったのがモーツァルトの作品である。

ピアノソナタで今までに公開演奏をしたのは「イ短調 KV310」と「イ長調 KV331」のみであるが、このように数が少ないのは、子供のころの体験を思い出してしまい演奏する気が起きないためなのかもしれない。そのように考えて、全曲を演奏して勉強をし直すことにした。

この3日間で第1巻を演奏してみたが、新たな発見が何か所もあり、実に面白かった。

まず「ハ長調 KV279」。小学4年生のころ課題として与えられ、第3楽章が弾けなくてピアノが一時嫌いになりかけたことがある、私にとってはあまり思い出したくない曲のひとつだが、今弾いてみると、弾きにくい原因は装飾がたくさんあることと、第3楽章のパッセージにあることが分かった。指が動けば大変心地よい音の流れになる。要するにまだテクニックが不十分な時にグレードが高すぎたのであろう。まずは見直すことができて良かった。

ヘ長調 KV280」は聴くことは何度もあったのだがまともに弾いてみたのは初めてである。シンフォニックな響きが感じられる第1楽章に雄大さを感じるし、第2楽章のロマン的な情緒も素晴らしい。第1楽章再現部に手の交差があるが、ここが個人的には好きな箇所である。

変ロ長調 KV281」はしばしばロココ(ギャラント)様式の特徴が指摘される作品であるが、第1楽章の第2主題以降で現れるトリルについて考えてみた。モーツァルトのトリルは諸文献から考えると「補助音から」入れるのが原則であり、旋律的な美しさを考えて主要音から奏することもある、と理解しているが、この第23小節にあるようなトリルは、補助音から奏するのが適切ではないだろうか。それは、そのように弾く人が多いということの他に、伴奏形で拍がはっきり示されている時には、KV457のように同音から奏して拍を明示する必要がないと思われるからである。この例はKV333の展開部などにもみられる。ただ、主要音から演奏するピアニストもいるのでどちらが正しいとは言えないようだ(以下譜例はブライトコップ版の全集より)。

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KV281

このソナタの第2楽章は crescendo, decrescendo など強弱記号が細かく書かれているのが特徴である。3度で演奏されるメロディーは、管楽器の響きを思わせる美しいものだと思う。第3楽章「Rondeau」の表記がなぜ「Rondo」でないのかということについては、以前「モーツァルトスタディーズ」という本でピアノ協奏曲について書いた時にふれたので、ここでは省略する。

変ホ長調 KV282」はバロック組曲様式との関連が指摘される作品。第2楽章メヌエットのトリオに「MENUETTO Ⅱ」と表記されていることがそのひとつの例と言える。第3楽章アレグロに向かって楽章ごとにテンポが上がる構成になっているが、第2楽章の雰囲気などはピアノ三重奏曲「ケーゲルシュタット(KV498)」をどことなく思わせるような感じもした。

この続きはまた数日後に。