モーツァルト「ピアノ・ソナタ」を弾く(2)

第1巻の後半である。

まず「ト長調 KV283」(ケッヒェル番号はすべて旧番号で表記する)。この作品は技巧的には比較的演奏しやすい作品と言われているが、第3楽章の難易度が高いのは要注意だと思う。

第1楽章の主題は二重唱アリアのような休符を挟んだ対話が特徴で、シンコペーションによる第2主題の美しさも際立っている。パッセージのなめらかさ、アクセントの効果的な用法など実に見事な楽章だ。第2楽章はアンダンテで、淡々とした語り方はハイドン風の美しさと言ってよいと思う。第3楽章はプレストで、舞曲風とも言えるが、リズム、アクセントの変化が顕著で、特に展開部の激しい気分が特徴と言える。この作品はまとまりの良さという点でモーツァルトソナタの傑作のひとつだと思った。

ニ長調 KV284」は交響曲的な響きが特徴の作品であり、マンハイム楽派の様式との関連がしばしば指摘される。この第1楽章で以下のようなリズムが出てくるが、これは数学的な正確さで演奏するのは現実的ではなく、このあたりは「演奏慣習」に従うのが良いと考える。

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KV284

私がこの楽章で特に好きなのは以下パッセージで聴かれるアルペッジョの美しさとつづく掛留音の見事さだ。

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KV284 m33

 

展開部で手の交差が出てくるがこの演奏効果も好きな箇所で、これはKV280と似ている。第2楽章は「Rondeau en Polonaise」だが、ポロネーズの典型的なリズムははっきりとしていない。この楽章で好きなのは第47小節以降で嬰ヘ短調に転調する部分。全体的には装飾句の美しさが特徴と思われる。第3楽章は変奏曲で、規模が大きい。主題と12の変奏という長さは単独での作品としても通用する大きさで、特に短調に変化する Var.7 と、トレモロの演奏効果を生かした Var.10が私の好みである。アダージョのVar.11も素晴らしい。

ハ長調 KV309」。これもマンハイム楽派との関連が指摘される1曲であり、特に第2主題にみられるリズムに美しさを感じる。第2楽章は2つの部分をそれぞれ変奏していく形式で、モーツァルトの音楽様式を知るうえで参考になる。第3楽章は「Rondeau」。私はこの楽章を聴くと「フルートとハープのための協奏曲」の終楽章を思い出す。同じハ長調だし、優美な雰囲気が共通しているように思う。モーツァルトをあまり演奏してこなかった私であるが、この楽章は愛好する曲のひとつで時々弾いたりしたこともあった。

続きはまたいずれ書くこととする。