練習環境

若い頃、ピアノ調律師たちが音の仕上がりに関して「これで音がよく出るようになりました」などと言っていたのが疑問だった。

これで平均律がきれいに揃った、などというのは当然のことなのであろうが、その他にも音色についての方がよほど重要だと思ったのだが。そして雑音の除去も。

この、「音がよく出るように」、つまり前より大きな音で響くということはピアノの歴史を考えると頷ける部分はある。鋳鉄フレームの採用からピアノは音が大きく出るようになったからだ。そして大きなコンサート会場でのピアノ協奏曲も効果的に演奏できるようになった。

ただ、それを練習する一般の家庭で、そのような音の大きさが必要なのかどうか。私は基本的には必要ないと思っている。日本だと、ピアノを所有している人がその楽器を置く部屋や、日本家屋を考えると広くても10畳くらいで、20畳の部屋がある家は少ないだろう。私が若いころ住んでいたアパートは6畳+3畳+キッチンという間取りだったが、3畳の部屋にピアノを置いていた(引戸は取り外して9畳の部屋のように使う)。

ヤマハ「部屋置きシミュレーション」のサイトを見ると4畳半くらいでもグランドピアノは置けるということは分かるのだが、蓋(大屋根)を開けての練習などできないだろうし、大屋根を全部閉めた上で譜面台をその上に置く、という方法を私は取っていた。これはピアニストの演奏写真でも見ることがある。以下はW.バックハウスの「ハイドン・アルバム」LPジャケットの写真。

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自宅での練習はこのくらいの方が疲れないことは確かで、単に「音が出ているのが良いピアノ」ということにはならないと思っている。

さて、昨今のオンライン指導の話題で、大学の練習室が使えないという学生の話をよく聞くようになった。まったく気の毒である。キーボードは持っているが音出しはできない、という場合どのように指導を受けたらよいのか、ということについては音楽ファイルの形で送ってもらう方法が有効ではないかと考えているが、それには「そんな貧弱な音で音楽の深いところが分かるのか」という批判があることであろう。

ただ、何もしないで新型ウィルス騒ぎの収束を待つ、ということはできそうにない。ならば何か方法を考えて前進する方がよい。そんな訳で、これからは私もいろいろな方法を試しながら大学の授業を行うことになると思う。