今後の演奏活動に向けて

本日は5月2日。本来ならピアノリサイタル開催の日ということであった。

東京だけでなく全国的に音楽関係の催事は中止あるいは延期になっているようで、3月上旬に中止を決めたのは多少早い気もしたが、今から思うと妥当な判断だったように思う。

中止になった途端に肩の痛みに襲われたことはすでに書いたが、リハビリはなかなか思うような成果を出していない。左肩は治ったが右がまだ痛いのである。しかし、これも少しずつ何とかしていくしかない。ある知人が「漢方薬はどうですか」、と言っていたので、そのうち試してみようかとも思っている。

さて、演奏活動で当面何もないということになると、何かテーマを決めて勉強したくなる。そこでまず始めたのがモーツァルトピアノソナタ全曲演奏。左手の力が少し落ちていた時期だったので大変だったが、一応全部を終えた。これについてはこのブログですでに書いた。その後、何度か勉強しているベートーヴェン。変奏曲全曲はすでに終えたので、もう一度ピアノソナタを見なおしているところである。今まではヘンレ版およびウニフェルザール版で勉強したが、今度は最近購入したベーレンライター版を使用した。今までにない発見も多く、かなり面白い。というのはヘンレ版は進行中の新全集も含めて校訂報告がほとんど掲載されていないのに対して、ベーレンライター版ではジョナサン・デル・マーによる詳細な注解を見ることができるからである。何とそれだけで一冊になっている。アカデミア・ミュージックに予約し、送ってもらうことも可能だったが、自分で受け取りに行ったのは昨年の9月のことだった。実際に手に取ってみたところ、全3巻+Critical Commentary を持つのはかなり重く、手提げ袋が二つ必要だった。

https://www.academia-music.com/user_data/beethoven_baren_pfsonata

この全集を注文すると日本語の解説がついており、これはかなり便利である。ただ、分厚い「Critical Commentary」は自分で訳して読むしかないので、これは結構大変な作業のように思ったが、実際は、自分で翻訳する過程が楽しい。いつものように第1番から順に演奏していくが、今まで気が付かなかったような指摘が随所にあり、実に興味深いエディションである。以下、面白いと思った箇所(小説は「b.」と表記):

・ 第2番 Op.2-2 第1楽章 b.72: ヘンレ版はこのターンをCis-H-Ais-Hとした上で、初版にはターンの上に♮#とされていることを注で指摘。類似の箇所に合わせたとのこと。ベーレンライター版ではベートーヴェンのターンでの音の扱いについて、他の箇所とも比較の上解説しており、分かりやすかった。

・ 同 b.204: 普通の楽譜はオリジナルの和音を掲載しているが、ベーレンライターではソプラノをGis-A-H-Gisと修正。これについて解説を読んだがベートーヴェンの音楽語法についていろいろ書いてある。

・ 第4番 Op.7 第1楽章 b.130-131:F音にタイがかかっていない。2014年のリサイタルではヘンレ版の分冊(Gertsch/Perahia)でタイに括弧がかかっているのを発見したため、F音を打ち直して弾いたが、すでにW.バックハウスなどがそのように弾いていた。べーレンライターだと「現代の多くのエディションはタイを加えているがそれを正当化する類似点はない」とされている。

この他にも今まで知らなかったような多くの指摘があるが(特に「第15番 Op.28」)、ここでは省略する。興味のある方はご自身で楽譜を手にとって見てほしいと思う。こういう勉強をしている時が私にとっては最も心休まる時間である。連休は第2巻を最後まで演奏してみたい。