「ベートーヴェン ピアノ・ソナタ」の勉強(4)

前回に引き続き、「ピアノソナタ第29番 Op.106」について。

第2楽章「スケルツォ」はアウフタクトで始まるが、1拍目に向かってcrescendoが指示されている箇所と、3拍目にアクセントが指示されている箇所がある。ここを見ると、かつて「交響曲第8番」のフィナーレがアウフタクトであることを知らずに聞いていたことを思い出す。ベートーヴェンの作品にはこのように強拍が分かりにくくなっている曲も多い。中間部の伴奏形は幅広い10度のアルペジオだが、このようなオクターヴを超えた伴奏形はすでに「ソナタ第2番Op.2-2」などから見られたもので、ベートーヴェンの伴奏に対する工夫を感じる(譜例はUniversal版)。広い伴奏形の例としては他にOp.31-1最終楽章など。

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その後のPresto から Prestissimo になるところで「8va」記号が見られるがここの弾き方は演奏者によって異なる。左手にも適用する人もいるようだが私は右手のみオクターヴ上で演奏。ベーレンライター版の注解を読んでも、ベートーヴェンの音楽語法とottava記号の書き方について詳しく論じられており(ピアノ協奏曲第3番、第5番の例もある)、ここれは2オクターヴ離れた音なのだろうと考えている。

第3楽章は長大なアダージョで、孤独感を表した音楽のように思う。主題がまず長く、テンポを維持しながら演奏すると息苦しくなる感じもあるかもしれないが、これが後期のベートーヴェン。例えば「チェロ・ソナタ第5番Op.102-2」のアダージョを演奏したときのことをよく思い出すが、弦楽器がうらやましく思ったものだ。ピアノで演奏するときに、弦楽器ならどんな響きか、ということをイメージしないととても間が持たないように思う。初めてこの作品を演奏したときにはワインガルトナー編曲版を聴くことが参考になった。

第4楽章ラルゴの序奏部は、16分音符の数え方が作曲者により指示されているのだが、どうにもわかりにくい。最初の小節が第2拍から始まる、としている書もあるが(伊藤義雄『ベートーヴェンのピアノ作品』、それでもまだよくわかっていない。そして第9小節では書き方が混乱しているとしか思えないが、以前の演奏では私はここも「16分音符」を基準として弾いたため、途中の8分音符(3連符)から急に遅くなる。これでよかったのだろうか、と今では思っている(譜例Universal版)。

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フーガについてはまたの機会にしたい。

ところで、腕の調子が少しずつ戻ってくると、今まで弾きにくかったパッセージがなめらかに弾けていることに気づく。やはり身体の健康は演奏に重要である。12年前にも左肩が痛くなったが、今回の右肩は重症だった。治るのには半年以上を要している。今まではピアノの演奏が腕に悪いとは思わなかったのだが、あるテクニックが肩の痛みに関与していることを最近発見し、今後はつとめて自然な奏法を考えないとまた痛みが発症するのでは、という考えのもとに、恐る恐る練習をしているという状況である。